和紙のQ&A:和紙の魅力とは?
2018年09月27日
*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****
完成された美しさ、そして無限の可能性
弊社は和紙専門店として、日々和紙と向き合っています。その中で常に感じているのは、和紙が持つ二つの魅力です。
一つ目は、和紙がそれ単体で美しく完成されたものであるということです。自然の素材である楮や三椏、雁皮といった原料から作られる和紙は、その一つ一つに個性があり、見ているだけで心が安らぎます。
二つ目は、和紙が未完成の状態ともいえるということです。言い換えると、和紙は想像力を働かせることで、どんな形でも思いにも応えてくれる万能の素材なのです。
懐の深い和紙
和紙は使う人の想像力を刺激し、どんな形にも変化します。ハサミで切り絵のようにカットすれば、繊細な模様が浮かび上がり、ちぎれば繊維がほつれて自然な風合いが生まれます。また重ねて貼り合わせれば、形や厚み、強度を自在に変えられ、透かしてみれば奥行きのある表情が現れます。その多様な表情は、作品制作のみならず、ファッションやインテリアなど、私たちの生活を豊かに彩ります。
原料の違いで生まれる個性
和紙の原料の種類や配合、そして製法の違いによって、出来上がる和紙の表情は実に様々です。下記に、代表的な和紙原料を使った場合の特徴をまとめました。
- 楮(こうぞ)
和紙の代表的な原料であり、最も多く使用されています。太く長い繊維が特徴で、力強さと温かみを兼ね備えた風合いが魅力です。
- 三椏(みつまた)
きめ細かく、柔らかな肌触りと優しい光沢感が特徴です。少し黄みがかかった上品な色合いも魅力の一つ。
- 雁皮(がんぴ)
繊維は細く光沢があります。漉き上がった和紙は、表面が滑らかで上品な光沢を放ち、透き通るような透明感があります。
和紙を眺めるだけで心が癒される
お客様の中には、和紙を眺めてその美しさを楽しむために購入される方もいらっしゃいます。この気持ち、私たちもよく分かります。
なぜ、人は和紙に癒されるのでしょうか?
その理由の一つに、1/fゆらぎの存在が考えられます。1/fゆらぎとは、自然界に多く見られる、不規則でありながらも一定のゆらぎを持つ現象のことです。例えば、川のせせらぎの音、木の葉が風に揺れる様子などが挙げられます。この1/fゆらぎを持つものを眺めたり感じたりしていると、心が落ち着き、リラックス効果をもたらすと言われています。
自然素材から作られ、人の手によって一枚一枚漉かれた和紙には、その過程で生まれる繊細な繊維の動きが見られます。これらの不規則な模様は、まさに1/fゆらぎそのもの。和紙を眺めたり、触れたりすることで私たちは心地よさを感じ、心が安らぐのです。
今回、弊社が日々感じている和紙の魅力についてご紹介しました。これは、和紙が持つ魅力のほんの一部に過ぎません。
和紙は単なる紙という枠を超え、私たちの生活を豊かにしてくれる存在です。生きていく上で必ずしも必要なものではないかもしれませんが、和紙があることで日常がより豊かになり、心に潤いを与えてくれます。
今後も和紙の魅力を広く発信し、より多くの方々に「和紙のある豊かな暮らし」をご提案してまいります。
※参考記事
和紙を使ったDIYアイデアを一覧でご紹介しています。
始めて和紙を購入するときに参考となる、購入場所や選び方のポイントについて解説しています。
癒し効果のある和紙のホスピタルアートに関する研究を行いました。
和紙のよくある質問 一覧へ戻る
著者/この記事を書いた人
浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之
石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
結納品リメイクパネル事例(MR_25)を追加しました。
2018年09月22日
本日、福岡県A様からご依頼頂いた結納品リメイク事例を追加しました。
創作和紙カタログ 品番:S-711のデザインをご希望だったA様。
パネルサイズに合わせてデザインを修正・調整をおこない仕上げました。
水引飾りは、パネル内で自由に位置替えが可能なマグネット取付タイプになっているので、季節や気分に合わせて様々なレイアウトを楽しむことが出来ます。
水引リメイクパネル製作事例25(MR_25)
■寸法:W500mm×H300mm×T19mm
■仕様:顔料染め楮紙、本金粉、樹脂デザイン、墨濃淡、水引マグネット取付タイプ
※壁面に縦横どちらでも設置可能
和紙の花ボックスアレンジメント(胡蝶蘭とバラ)の製作事例を追加しました。
2018年09月13日
お孫さんから、ご祖母様(96歳)の誕生日プレゼントとしてご依頼頂いた「和紙の花ボックスアレンジメント」の制作事例を追加しました。
長寿祝いにも使われる白や紫色を基本色に、胡蝶蘭やバラ、葉物などを全て国産和紙で表現。「プレゼントを渡された時」と「開けたとき」の2回、嬉しさや感動を与えてくれるボックスフラワーに仕上がりました。
和紙ブーケ製作事例25(BQ_25)
■ご用途:ご祖母様の誕生日プレゼント
■和紙の花について:
土佐和紙(高知県)をはじめとした国産和紙を使用して作られた花や葉。
和紙の良し悪しが仕上がりに影響するため、素材作りから染色、加工、アレンジメントに至るまで全て自社一貫制作でおこなっています。和紙の花は枯れる心配がなく、いつまでも美しく咲き続けます。
和紙のQ&A:なぜ手漉き和紙は少なくなってしまったのでしょうか?
2018年09月05日
*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****
日本の伝統工芸品として、書道や絵画、工芸品など様々な用途で愛されてきた手漉き和紙。しかし、その生産量は増加するどころか減少の一途をたどっています。一体なぜ、手漉き和紙は少なくなってしまっているのでしょうか?今回は、その背景にある要因をいくつかご紹介します。
手漉き和紙減少の要因
後継者不足
手漉き和紙の製造は、熟練の技術と長年の経験を必要とする非常に手間のかかる作業です。しかし、その技術を継承する若い世代が減少しており、深刻な後継者不足に直面しています。
その要因の一つとして、技術習得の機会が限られていることが挙げられます。多くの工房が家族経営であり、後継者を育てる余裕がない場合も少なくありません。また、後継者育成には時間と費用がかかり、多くの工房にとって大きな負担となっていることも、後継者不足に拍車をかけています。
機械漉き和紙の普及
大量生産が可能な機械漉き和紙の普及も、手漉き和紙の需要減少に拍車をかけています。私たちが普段手にしている「和紙」と呼ばれるもののほとんどが、実は機械漉きです。機械漉き和紙は、手漉き和紙に比べて安価で安定した品質を保つことができるため、商業用の印刷物や包装紙など、大量消費される分野でも広く利用されています。しかし近年、機械漉き和紙も原材料の高騰や価格競争などの影響を受け、廃業に追い込まれるケースが増加しています。
ライフスタイルの変化
現代のライフスタイルの変化も、手漉き和紙の需要減少に影響を与えています。洋風建築の増加やデジタル化の進展により、障子や襖、書道用紙など、伝統的な和紙の用途が減少しています。また、和紙の定義が広がり、多様な「和紙風」商品が出回るようになったことも、手漉き和紙の需要を低下させていると考えられます。生まれてから一度も本物の和紙に触れたことがない方も珍しくなく、こだわりをもって漉かれた手漉き和紙が埋もれてしまっているのが現状です。
コストの高騰
和紙原料の価格高騰や光熱費の上昇は、手漉き和紙の価格上昇に直結しています。その結果、本物の手漉き和紙は手軽に購入できるものではなくなり、需要の減少に拍車をかけています。
また、原料を海外産原料や洋紙原料の木材パルプなど安価なものに切り替えても、大量生産によるコスト優位性を持つ機械漉き和紙との価格競争にさらされます。結果として、手漉き和紙職人は「本物を作っても売れない、安い物を作れば売れるけど、本来の和紙からかけ離れたものになる」というジレンマに直面しています。
手漉き和紙の未来を守るために
今回は、手漉き和紙が少なくなってしまっている背景には、様々な要因が複雑に絡み合っていることをご紹介しました。しかし、こうした困難な状況を乗り越え、伝統を守り続ける和紙職人たちが今もなお日本各地で活躍しています。彼らの漉く一枚一枚の和紙には、長い歴史と熟練の技、そして和紙への深い愛情が込められています。
弊社は和紙専門店として、職人たちが丹精込めて漉き上げた和紙の魅力をより多くのお客様にお伝えし、日本の伝統工芸を守り、未来へと繋いでいきたいと考え様々な取り組みを行っています。手漉き和紙の温もりや風合い、そしてその歴史に触れていただき、和紙のある暮らしを楽しんでいただければ幸いです。
※参考記事
日本全国にある和紙の産地の一覧と、それぞれの地域の代表的な和紙についてご紹介。
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著者/この記事を書いた人
浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之
石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。